消滅した創造主Sの遺志を受け継いだ双葉刹那は全並行世界を見守る役目を果たすために旅立った。

その途方もない旅で並行世界間を行き来するために刹那が使っていたこの事象確率が定まらない不安定な世界が本作の舞台の一つである。

事象確率が定まらない不安定な空間ゆえにどんなことが起きても不思議ではないと言える。

事象確率の確定が不安定な世界で伊耶那岐が刹那に託した三つの精神、天照、月読、須佐之男が投影した世界。

もう一つの舞台となるこちらは伊耶那岐が生まれ育った時代の世界。

これは、太古の昔、伊耶那岐の記憶を元に双葉刹那が追体験する世界である。

舞台となる時間軸より数年前この世界では、四凶と呼ばれる悪神と人間たちの間で争いが勃発した。

この大戦で人間の大半が死滅した。

この絶望とも言える状況の中で勇敢に戦い、四凶を封印した者たちがいた。

建速須佐之男命、天照大御神、月読命の仙術使いの三人だった。

この者たちは、のちに三貴神と呼ばれ、生きる伝説として崇められた。

何とか生き残った9割以上の人々は肉体を捨てて、精神体となってしまった。

それは、滅びを迎えかけた人類が精神体として永遠の時を生きるためのもの。

そして、精神体となった多くの仲間たちと一つの大きな精神体となることで、常に共に在り続けるためでもあった。

古代人たちは、現代人と比較すると寿命が遥かに短く、たったの40年。

精神体となる者が多くいる中、未成年者は成人を迎えるまでは精神化が許されてはいなかった。

二十歳を迎えた者は、己の人生を選択する義務を与えられる。

そこで精神体となって既に精神体となった仲間たちと融合し永久の時を生きることを選ぶという選択。

または、そのまま短い人生を生き続け、限られた生命を次の世代へ紡ぐことができる他には代えがたい幸せな人生を歩む選択。

どちらかを選ぶ必要があった。

二十歳を迎えた伊耶那岐と伊耶那美が選んだ選択とは・・・